注目を集める再生医療
最近、耳にするようになってきた医療分野の言葉に「再生医療」があります。
iPS細胞の研究で山中伸弥教授がノーベル賞を受賞したこともあり、その言葉自体は多くの人に知られるようになりました。
今では、再生医療は病気の治療だけでなく、美容医療の分野でも応用されています。
しかし、一般の方にとっては、どんな治療法があるのか?種類や効果は?メリットとデメリットは?といった疑問点も多いのが現状ではないでしょうか。
この記事では、ナールス美容医療アカデミーの「肌の再生医療とは?効果や種類からメリット・デメリットを解説」を参考にしながら、肌の再生医療とはどういうものなのか、またその効果や種類、メリットなどをわかりやすくご紹介します。
再生医療とは?
再生医療とは、病気や事故、加齢など、さまざまな理由によって失われたからだの組織を、自分の組織や細胞を利用して再生することを目指す医療技術です。
私たちの体は、けがをした時など、自ら再生しようとする「自然治癒力」が備わっています。その「自然治癒力」を活かし、自分の細胞を使用することで、傷ついたり機能が低下した組織や臓器を修復、再生して、正常な状態を取り戻します。
医療の世界では、根本治療ということばが使われますが、失われた組織や臓器の根本的な再生を目指すものです。
これまで有効な治療法のなかった疾患の治療ができるようになるなど、医療界からも国民からも高い期待が持たれています。
そのため、新たな研究や臨床での取り組みも進みつつあります。
たとえば、平成26年9月に、世界で初めてiPS細胞を用いた移植手術が行われるなどの成果を上げています。
一方、再生医療はまだ新しく、未知の部分もたくさんあります。そのため、安全性を確保することも大切です。
美容医療においては、アンチエイジング(若返り)やAGA・FAGAの治療などの目的で利用されることが多く、肌のハリや弾力を取り戻したり、シミやしわ、薄毛を改善するための治療において効果を上げています。
どんな治療に生かされているの?
再生医療は、病気やケガといった医療にも使われていますが、不妊治療や美容まで幅広く応用されています。
1)美容医療
美容の分野においては、主に肌や頭髪に関係した治療に活かされています。
たとえば、太ももや耳たぶなどの紫外線ダメージがないパーツから、自身の線維芽細胞を取り出して培養し、それを顔などの肌老化が進んだパーツへ注入することによって、肌のハリや弾力を取り戻す治療があります。
元気な線維芽細胞が肌に入ることで、若々しい肌を手に入れたり、顔のたるみやほうれい線、しわを改善します。
これは幹細胞治療とも呼ばれています。
幹細胞とは、血管や細胞、脂肪に変身(分化)することができる万能な細胞のことです。線維芽細胞も肌の幹細胞であり、「iPS細胞」も幹細胞の一種となります。
頭髪の場合は、育毛・発毛・抜け毛の抑制に使われています。お腹やお尻などから採取した脂肪幹細胞を頭皮に移植して、はたらきを活性化させます。薄毛の人や育毛に悩んでいる人にとっては、希望の治療として注目されています。
また、頭皮や歯科領域で幹細胞培養上清液を使った治療もあります。
2)整形外科
整形外科では、神経変性疾患・運動器障害・慢性疼痛などの症状を持つ患者に使用されています。
たとえば、膝が悪い患者に再生医療を行う場合、患者自身の皮下脂肪から採取した幹細胞を培養し、膝関節に注入します。自分自身の細胞を使用しているため、拒否反応も少なく、注入した幹細胞が炎症を抑えたり、組織の修復を促すはたらきをします。
また、「自家培養軟骨移植術」は保険適用となっている治療法です。
保険適応にはさまざまな条件がありますが、患者の体内から採取した膝軟骨の一部を、コラーゲンが入ったゲル状の物質の中で約1か月間培養した後、欠損部分へ移植する方法です。
3)内科・外科
内科や外科でも再生治療は応用されています。たとえば、糖尿病や呼吸器障害・心疾患などです。
糖尿病の再生医療では、幹細胞がすい臓や血管を再生・修復することでインスリンの分泌を増やしたり、血管での糖の取り込みを促進して血糖値を下げることができます。
また、糖尿病による炎症を抑えることにより、合併症の改善も期待できます。 ほかにも、幹細胞のホーミング効果により、別の弱った臓器も同時に改善されるというメリットもあります。
呼吸障害では、肺の修復や成長に携わる体性幹細胞が肺の各領域に存在することがわかってきました。肺の再生・修復へ応用する研究も進んできていますが、こちらの研究はまだ発展途上で時間がかかります。
4)NK細胞療法
NK細胞とは、ナチュラルキラー細胞のことです。
血液中のリンパ球の10~30%を占め、体内の異常な細胞を見つけると細胞を殺してしまうほどの高い攻撃力を持った細胞です。
NK細胞療法とは、患者の血液からNK細胞を採取して、培養(異常な細胞を殺傷・攻撃する力を高める)してから、点滴液で体内へ戻す治療法です。
体内でNK細胞の数が増えることによって、自然免疫力を高め、がん治療に効果が期待できます。
5)不妊治療ほか
不妊治療では、自分の血液から取り出した、高濃度血小板血漿(血液中の血小板)を分離して子宮内に注入するという再生治療が行われています。
受精卵を子宮内に戻す「胚移植」を実施する度に、2回の治療が必要です。
妊娠には子宮内環境も関係しており、そのなかでも血小板成長因子がとても重要な役割を持っています。これは細胞の成長を促す、豊富な成長因子を放出することで、子宮内の環境改善を促し、妊娠率を高めるための治療です。
培養した血小板成長因子を子宮内に注入することによって、子宮内の環境を改善し、受精卵の着床率を向上させたり、妊娠の維持に期待ができます。
肌の再生医療のメリット・デメリット
再生医療には、大きく2つのメリットがあります。
1)自身の細胞を使用するため、副作用が出にくい
1つ目のメリットは、自身の細胞を使用するため副作用が出にくいということです。今までは自身の細胞を使わない治療が多かったため、副作用や拒否反応が出るリスクがありました。
たとえば、臓器移植において、他人の臓器を自分の体内に取り込む(移植する)と、さまざまな遺伝子情報などが違うために移植された体が拒否反応を起こします。
再生医療で自分自身の細胞を材料とする場合は、他人の情報ではなく自分のコピーなので、副作用が出にくいとされています。
2)外科手術に比べ、体への負担が少ない
再生医療は外科手術のように切除したりしないため、体力のない高齢者や子どもへの治療にも利用しやすく、体の負担が少ないのもメリットです。
外科手術は、体力のある成人でも相当のダメージを受けたり、痛みや感染症などのリスクがありますが、再生医療を行えば負担も軽く、リスクを最小限に抑えることができます。
このように、メリットの多い再生治療ですが、デメリットもあります。
1)研究中の医療で不明なことが多い
デメリットの1つめは、まだまだ研究中の医療技術であることです。
一部の効果が認められた再生医療については、既に医療現場でも使われるようになってきましたが、研究途上でできないことや、効果や副作用などのリスクがわからないものも多くあるのが現実です。
世界中の研究者が再生医療の研究に取り組んでいるので、日進月歩で再生医療の技術は発展していますが、現時点でも治すことのできない疾患は多くあります。
効果や安全性の検証には今後の研究の継続が必要です。
2)保険適用にならない
2つ目のデメリットは、保険適用にならないため費用が高額になることです。
効果が既に認められ、実用化されたものについては保険適用されているものもあります。しかし、大半の治療は、まだ研究途上ということもあって自由診療です。そのため治療費が高額となり、受診者の経済的な負担も大きくなっています。
3)細胞の種類により、ガン化するリスクがある
再生医療で使う細胞の種類によっては、アレルギーやがん化のリスクを否定することができません。現在、これらの因子を取り除くための研究も積極的に行われていますが、まだ完全にリスクを取り除くまでには至っていません。
まとめ
肌をはじめ、さまざまな分野における再生医療の現状と、メリット・デメリットなどについて解説してきました。
まだ発展途上の技術ではありますが、非常に大きな可能性を秘めているのも事実です。今後、現時点では治療法のない希少な難病患者などの治療法開発や、さらなるアンチエイジング治療にも期待ができます。
この記事「肌の再生医療の効果」が、美容医療やアンチエイジングの再生医療に興味がある方にとって参考になれば幸いです。